モノが大好きな人にとっては、誰かの持ち物が気になるし、素敵なあの人の持ち物は欲しくなる。あの人はどんなものを持っていて、どんな家でモノに囲まれてくらしているのだろうか。

そんな欲しい、気になるというあなたの希望をバイヤーの塚本太朗が叶える「Sleeper Market」は、毎週フライデー・ナイトの20:00から翌10:00まで時間限定でオープンする売り切れ御免のマーケットです。

気になるあの人のもとに直接伺い私物を買い付けて、オンラインショップだけで販売します。

モノにまつわるエピソードとストーリーとともに、真夜中のお買いものを思う存分お楽しみください。

インタビュー記事の最後に販売商品の一覧があります。

 

Vol.2  小山薫堂(放送作家・脚本家)


放送作家で脚本家、くまモンをはじめ日本各地のものづくりや商品開発に数多く携わる小山薫堂さんが今回のゲストです。太朗さんとは以前、薫堂さんがパーソナリティを務めるFMヨコハマのラジオにゲスト(生放送)で出させて以来ご縁があるそうで。訪れたのは人と人との繋がりやご縁をきっかけに手に入れたクラフトやアートが並ぶ茶室が併設されたプライベートオフィス。小山薫堂さんのものとの関わりについてお話をうかがいながら買い付けをさせていただいた模様をお届けします。

 (写真とテキスト:加藤孝司 Takashi Kato)

 

 

「ときめきが持続するモノとの出合い」

 

運命のものとの出合いは、「人」との出会いから 

塚本:いきなりですが、小山さんはモノがお好きですか?

 

小山:はい。ものすごく好きなんです。それも捨てられない質で、しかも思い出マニアで。だから旅先で飲んだ牛乳瓶も捨てられないんです(笑)。以前、断捨離の先生のこんまりさんにご指導いただいたことがあって、こんまりさんがいうには、手にした時にときめかなかったら捨てればいいんですと言われました。結局、全てのものにときめいてしまい、ひとつも捨てられませんでした。

 

塚本:それはすごいお話ですね。僕は小さい頃からおもちゃ屋さんになりたいと思っていたのと、しかも蒐集癖もあってあれもこれも欲しくなっちゃうんです。ものを扱う仕事をさせていただくことも多いのですが、ものを選ぶ基準みたいなものは薫堂さんと一緒で、値段や価値よりも自分がときめくかどうかが大切だと思っています。小山さんは好きなジャンルというのはあるんですか?

 

小山:いろいろありますが、茶碗などの土ものは好きですね。

 

塚本:やはり九州のものがお好きなんですか?

 

小山:それもいろいろです。今ここにあるものですと、奈良の辻村史朗さんの器が好きですね。辻村さんは細川護熙さんが総理大臣を辞めたあとに弟子入りしたことでも知られる作家さんです。

 

塚本:それはすごそうですね。細川護煕さんの器、見たことあります!

 

 

小山:山の中で仙人のような素敵なくらしをされながらものづくりをされています。辻村さんの息子さん辻村塊さんも同じ奈良で作陶をされていて、塊さんの粉引の作品も蒐集しています。

 

塚本:最近はコロナの影響もあり、なかなか海外にもいけませんが、薫堂さんは海外では蚤の市とかも行かれますか?

 

小山:行きます。ただ海外はもう2年は行っていないですね。

 

塚本:買い付けをするしないに関わらず、僕も海外では蚤の市によく行くのですが、とにかくたくさんのものをみると気持ちが高揚しますよね。

 

小山:そうそう。あれはなんなんでしょうね。工芸もですが現代アートも好きで、最近だとアーティストの佐藤允さんの作品を買いました。

 

ーー気になる作家さんとはどのように出会うことが多いですか?

 

小山:いろいろですが、辻村さんは友人から「薫堂さん絶対好きだから」となかば強引に奈良に連れていかれたのがきっかけでした。それで伺ってみたらご自身で建てた茶室にご自身の書が飾ってあって、自らつくった器でお茶をいれていたり、その暮らしの豊かさに圧倒されました。その時は次の予定もあったので30分で帰るつもりが、結局その日の夜中までご一緒させていただきました。

 


 

小山薫堂さんの愛用品とは

 

塚本:人との出会いで手にするものが多いというお話でしたが、ふらっと入ったお店で衝動買いをすることはありますか?

 

小山:それは少ないかもしれません。お買い物に関しては、お金は「それを作った人に向けた拍手」だという考え方があって、僕にはその考え方がしっくりきています。だから欲しくて買うというよりも、器だったらお借りするという感覚があります。作った人の生き様に惚れてほしくなるというか。だから作品に一目惚れして買うことは逆に少ないかもしれません。

 

塚本:とても興味深いですね〜。確かに作り手本人からだと、なおさらですね。

 

小山:だから、本当に魅力的は人にお会いして話を聞くと、その人が作ったものを欲しくなっちゃうんですよ。

 

塚本:わかります。そうなりますよね。器以外にも気になるものはありますか?例えば、ステーショナリーとかはどうですか?

 

小山:ドイツの「ファーバーカステル」のパーフェクトペンシルは長年愛用しているもののひとつです。

 

塚本:鉛筆削りの付いた万能鉛筆の名品ですね。

アイテム的についつい集まってしまうものってほかにありますか?

 

小山:お猪口はたくさん持っていますね。

 

 

塚本:お猪口ですか。ということはたくさん呑まれるということですね。

 

小山:はい。お酒は好きです。でも実は日本酒よりワイン派です。日本酒はお猪口を使いたくて呑むという感じですね。お猪口ってよくないですか?

 

塚本:はい、そうですね!でもお猪口は持ってないなぁ〜。。。

 

小山:お茶碗もそうですが、手のひらにすっぽり収まる感じというか。おっぱいを触りたくなる感じに近いかもしれませんね。お猪口もですが、つくり手との出会いが先という場合が多いです。

 

塚本:陶器で焼物だと手にした時の温かみも感じますしね。あとはどんなものを集めていますか?

 

小山:かばんが好きで、海外のレザーものとか、京都の信三郎帆布のかばんも好きでたくさん持っています。レザーはつかうたびに味がでてきて、「ブリオーニ」のレザーバッグ(ブリーフケース?)はニューヨークのフォーシーズンズの隣にあったお店のショールームに飾ってあったものを気に入って買わせてもらいました。

 


塚本:これもいい味がでていますね。レザーは経年変化を楽しむのにとても良い素材だと思いますし、その人の歴史が刻まれますよね。

 

小山:これは好きで一緒にいろんなところに旅に出ました。今中を見たら航空券を入れたままですね。

 

塚本:それもそのまま入れて買い付けさせてください(笑)

 

小山:恥ずかしいですけどいいんですかね?

 

塚本:もちろんです!このチケットの価値観を共有できる人、必ずいると思います。

 

 

 

太朗さん、そろそろ買い付けの時間です。

 

塚本:バーテンダーのロゴが入ったこのグラスはどこのものですか?フォルムがとても素敵ですね。

 

小山:これは作家のアーネスト・ヘミングウェイが好んで通っていたというイタリアのヴェネツィアの「ハリーズ・バー」のグラスです。僕も大好きなお店で、このグラスはすごく気に入ってお土産としていくつか買ってきたものです。

 

塚本:ヴェネツィアかぁ。行ってみたい都市です!これもいいですか?

 

小山:うーん、すごく気に入っているし、珍しいものだから売りたくないですね……。

 

 

塚本:これはペアで買い付けたいです……。小山さんといえば写真やカメラもお好きだと聞きましたが、写真関係のものはありませんか?

 

小山:最近使っていなかったんですが、ライカのインスタックスのフィルムを使ったインスタントカメラ「ライカゾフォート」と、中にフィルムを模したお菓子が入ったカメラの形をした缶はどうですか?

 

塚本:可愛い〜。いいですね。ありがとうございます。愛用のカメラはずっとライカですか?

 

 

 

小山:一番最初に使ったカメラは祖父から譲り受けたニコンFでした。富士フィルムのカメラも好きで、最近だとライカのカメラを使うことが多いです。昔はよくフィルムも撮っていたのですが、いつもお願いしていたラボが閉まっちゃってからはあまり撮っていません。額に入れた自転車のモノクロ写真はそこで紙に焼いてもらったものです。

 

ーー紙っていいですよね。最近またフィルムで写真を撮る人が増えているみたいですね。

 

塚本:この鯛のロゴが入ったキャップはどこのですか?

 

小山:それはプロデュースさせていただいている天草のたいやき屋さん、「まるきん」のために作ったキャップです。まるきんは実家の近くに昔からある馴染みのたい焼き屋さんで、実は一回閉店しているんです。

 

塚本:そーなんですか?たい焼き大好きです。一度食べてみたいです!

 

小山:子供の頃はお小遣いを握りししめてたい焼きとたこ焼きを買ったのは懐かしい思い出です。閉店したと聞いて再生させたい!と思いました。ロゴはたい焼きとしては珍しい、まるきんの丸い形をしたたい焼きを模しているんですよ。ビームスで作ってもらいました。

 

塚本:ビームスさんなのですね。このキャップもいいですか?ロゴが可愛いですね。


 

 


小山:はい。僕が絵付けをした天草の丸尾焼のめし茶碗もありますよ。

 

塚本:碧い絵付けが可愛い。これは僕が欲しい。縁にはなんて書いてあるんですか?

 

小山:「米クエ」です(笑)

 

塚本:米クエ(笑)いい感じに柄になってますね。これ、夫婦茶碗的にペアだといいかもです。

 

小山:ああ……。まだあったかな。

 

塚本:すみません……。ぜひペアでお願いします!お話を伺って、小山さんのモノ選びが人との出会いからというところがすごく印象に残りました。今日は普段から大切にされているものをたくさん見させていただきありがとうございました。

 

<プロフィール>

小山 薫堂  Kundo Koyama

放送作家。脚本家。1964年熊本県生まれ。日本大学芸術学部放送学科在籍中に放送作家としての活動を開始。「料理の鉄人」「カノッサの屈辱」など斬新なテレビ番組を数多く企画。映画「おくりびと」で第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞を獲得。執筆活動の他、京都芸術大学副学長、地域・企業のプロジェクトアドバイザー、下鴨茶寮主人、日本国際博覧会では、テーマ事業プロデューサーを務める。「くまモン」の生みの親でもある。

 

塚本 太朗  Taro Tsukamoto

THE CONRAN SHOP退社後、リドルデザインバンクを設立。現在はTHINK OF THINGSMD企画担当。また、商業施設や駅ナカのショッププロデュースをはじめ、地方活性化の為の商品企画からトータルディレクションをする傍ら、ドイツとオーストリアから買い付けたウェブショップ「マルクト」も運営。著書にマルクト(プチグラパブリッシング)、ウィーントラベルブック(東京地図出版)、ウィーンこだわり旅ブック(産業編集センター)など。